タイムマシンを作ったって聞いたけど?
いや、そんな大層なもんではないですよ。
いやいや、すごいことですよタイムマシンですから。
まだ欠陥もあるので、恥ずかしいですよ。
おや、あそこにある軽自動車みたいなものがそうですか?
なんとなく、むかしのスバル360みたいで可愛いですね。
ちょっと、見させてもらっていいですか?
ええ、よかったらどうそ、見てください。
なんなら乗ってみますか?
乗れるんだったら乗せてもらいましょうか?
ドッコラショと。
じゃあドアを閉めましょうか(バタン)
ちょっと窮屈な気もしますけど、悪くないですね。
さっき、欠陥もあるとおっしゃいましたがどんな欠陥ですか?
ええ、じつは片道だけしか無理なんです、早い話が過去へは行けないのです。
前にしか進まないのですから。
ほう、未来に行けるのであれば、それだけでも素晴らしいじゃないですか。
では、スイッチを入れてください。
ごめんなさい、スイッチはないのです。
すでに、動いているのですよ。
えっ、そうなんですか、この眼の前の時計がありますね。
この針を何年か先にセットするんじゃないんですか?
いえ、先程このマシンに欠陥があると言いましたけど、じつはスピードが出ないので す、このアクセルを踏んでも早くなりません。
その目の前の時計の、秒針の速さでしか未来に進まないのです。
なるほど、だから未来には間違いなく進むけど、その速さは時間の速さと同じというわけですか。
そうなんで、実はタイムマシンはすでに出来上がっていたのです。
ほら、あなたの手首についているマシンもタイムマシンだったというわけです。
過去には進めない、未来へのスピードも上げられないタイムマシンだっったのです。