家内が亡くなってこんなにも時間が過ぎたのかと思った。
妻の死という信じられない衝撃も、長い時間がたつとこんなにも平穏な気持ちでいられるものなのか。
どうしてなんだ、涙がとめどなくあふれ出ていて、いつも本堂の天井ばかり眺めていたのに。
いつも0歳の子供を抱いて、3歳の子をひざに乗せて6歳の子の手をつないですわり、寺の住職さんにお経を唱えてもらっていた。
あれから16年の歳月が過ぎて、子供たちも大きくなった。
失業して、路頭に迷い、先のことも考えられずに苦しんだときもあった。
いっそ、4人みんなでお母さんのところに行ったほうがいいのかな、そんな思いが頭の中を駆け抜けたときもあった。
寒い冬、この石油ストーブが不完全燃焼したほうが楽かも。
ミルクを吐いて泣き叫ぶ次男、鼻血で布団を血だらけに染めて泣く長女を抱いて思ったこともあった。
でも、アジアやアフリカ難民に比べたら恵まれているじゃないか。
もう少しがんばってみようと思い続けていつの間にか時間が過ぎた。
今は三人の子供たちがいたからこんなにも幸せなんだと思えるようになった。