下り坂を楽しもう

人生を折り返して、下り坂も終わりに近い爺の戯れ言

オーバーホール


4.5年前だったか、下腹部に脂肪の塊のようなものができた。
痛くも痒くも無いし、大きくなる様子も無いので、そのままにしてきた。
もし別の場所にできていたら、たぶん病院に行って見てもらったかもしれない。
しかし、できた場所が下腹部だったので幾らかの抵抗があった。

だって、もしも若い看護婦さんがいて、(別にそんなに若くなくてもいいけど)さっとパンツを脱がされたら赤面するだろうし。
それに、これは切るほうがいいといって、剃毛なるものが始まったらどうしようもないではないか。
もう長いこと女性に見られるようなこともなかったし、もしも剃毛のために触られるよな事になったらと思うと恐怖が走る。
そんな恥ずかしさを覚えるなら、できるだけ我慢しようと長年、ほっといたままだった。

ところがこのところ娘が、お父さん加齢臭がすると言い出した。
そういえばときどき何かが臭うような気がする。
色々調べて、加齢臭にはめかぶの酢の物が効くと聞くや、そればっかり食べた。
しかしそれでも、たまに変わった臭いがする。
そしてついにその異臭のする原因を発見したのだった。
それが何年も連れ添った腫瘍だったのだ。

よく見てみると、その腫瘍から汁が出てそれが強烈な匂いを放つのだった。
さっそくネットで調べてみると、粉瘤というものらしい。
英語で言うとアテローマと言うらしい。

これは大変だ、このままにして置けるはずはないと、さっそく皮膚科に行くことにした。
そこで見てもらうと案の定、たぶん間違い無いだろうと。
このところ患者さんが多いので、2週間後に手術をしましょうということになった。
そして2週間が経ち、意を決して手術に備えた。

そしてまず血圧を測りますということになり、測定が始まる。
しかし看護婦さんが怪訝な表情をする。
緊張していますか?
それは手術と聞くと少しは緊張しますと応える。
ちょっとここに横になって休んでください。
そしてしばらく休んでから再度血圧を測定する。
やはり高い状態を保っている。

そして先生が来て、この血圧では手術はできないので血圧を下げる必要がある。
ということになって、他の病院を紹介してもらうことになった。

そしていま薬を服用しながら、血液検査の結果を待っている。
これまで全く、自覚症状もないし、健康だと思っていた。
定期検診なんて、家内を亡くしてから十何年も受けていない。

ただ三人の子供を育てるためだけに生きてきたようなもんだった。
ただでさえ、妻に先立たれた男は寿命が縮まるという。
ところが僕の場合は、妻に先立たれたうえに三人の子育てだ。
その間に、体になんらかの変化が起こっても不思議ではない。

考えたら、そろそろオーバーホールの時なのかも知れない。
来年は子供たちみんな巣立つ予定だ。
いい機会なのかも知れないといい方に考えることにした。