浦島太郎は、その後どうやって生活したのだろうか?
玉手箱を開けたら煙がもくもくと出てきて、浦島太郎は白い髭が生えてしまった。
そうか、竜宮城で楽しんだことは幻か夢だったんだ。
でも思い出すと結構楽しかったんだ。
それはただの思い出に過ぎなかったけど。
それからの身の置き方には、なんの影響もなかったのかな。
老いてしまったら、過去を懐かしむ喜びさえも虚しい。
ただ毎日、魚を釣って少しばかりの晩酌ができたらいい。
もう誰も尋ねてくる人もいないだろうし。
番屋の囲炉裏に火を焚べて、どこかで仕込んだ酒を飲み床につこう。
浦島太郎には子供はいなかったのだろうか?
子供の代わりが、ウミガメだったのかな。
ある日に海に出かけると、またウミガメが砂浜にいたとか。
涙を流しながら、一生懸命卵を産んでいた。
産み終えたウミガメはやがて海原に帰ってゆく。
浦島太郎は、その産卵の後に、棒を立てて子亀がかえるのを見守った。
そしてある日、そこからたくさんの子亀が出てきた。
そして一目散に、大洋に向かって歩き出した。
そんな姿を目を細めてみていたのだろうか?
きっと浦島太郎は、ひとりで静かに死んでいったのだろう。
誰にも知られずに、大木が朽ちるように。
悠久の時間の中で、静かに息絶えたのだろう。
それでいいのだ。