下り坂を楽しもう

人生を折り返して、下り坂も終わりに近い爺の戯れ言

理由なき反抗

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昭和の時代

この時代の若者は常に何かに反抗していた。 反抗することが若者の特権だった。 彼らの目はいつも何かを睨んでいた。この社会にある理不尽なもの、不正ないかがわしいものを。 大人の傲慢さや権力者たちの横暴を許さなかった。そして見逃さなかった。 もし見つけると、己の非力さも厭わず、野犬のように噛み付いた。 中には世界革命を理想とするものも現れ、学生運動も日常的な社会に変わっていった。

生き物すべて

若者だけではなかった。 空き地で生まれた野良猫の子猫さえもが逆らった。 まだよちよち歩きのくせに、人間を見ると威嚇した。 あの小さな口の隙間から息をフーッと吐いて眼の前にいる大きな人間を威嚇した。 猫は愛玩のために飼われるわけではなく、害獣を駆除するために飼われた。 餌は麦飯に味噌汁をかけたねこまんまだった。 当時はキャットフートなんてものはなかった。 人間が食べ残した魚の骨があればいいほうだった。 肉が食べたかったら自分でネズミを捕るのは当たり前。 そうして、人間と猫との関係は相互利害で成り立っていた。 猫に追い詰められたネズミでさえも、猫に歯向かっていくのを目の当たりにした。 猫はそんなネズミを手玉にして、遊びながら狩りのしかたを覚えていった。

平成の時代

平成の若者の口には牙が消えていた。 先の時代が「理由なき反抗」なら、今は「理由なき従順」だろうか? 強いものにかしづき、権力者におもねる。 不正や理不尽な事象には目もくれない。 自分には直接関係ないことだと。 卑近な場所が楽しければそれでいい。 働いて収入があればそれでいい。 何も自ら危険を犯す必要はない。 社会の中で困難にあうとメンタルが壊れたと引きこもる。 だから反抗なんてダサいことはしたくない。 いつの間にか猫も愛玩動物になり、キャットフードをもらい、猫なで声で飼い主の足にまとわりつく。 若者も猫たちのように愛玩されることを好むかのようだ。 そんな若者を手のひらの上で転がしながら、為政者たちの横暴は続いてゆく。