これまで、いろんな仕事をしました。
電気関係の仕事もしました。
その時は自動車の部品を作る会社で働きました。
工場には工作機械が何百台も並んでいます。
それらの機械の維持管理をしていました。
もちろん電気関係部門での仕事。
工場の屋根裏には電線が張り廻られています。
その電線の上をスパイダーマンのように移動します。
その電線から、床の工作機械へ電気を送る作業です。
屋根裏の電線にまたがって、その電線の被覆を剥ぎ取ります。
そして、工作機械から伸びたケーブルをつなぎます。
工作機械のラインは止められないので、ケーブルの接続は生きたままやります。
自分の体に200ボルトの電気が充電しています。
でも一本ずつ作業するので電気は流れません。
肉体が帯電するだけです。
体がもし変なところに当たると、感電します。
たまに、頭がボケていてケーブルを電気が生きたままペンチで切ったりします。
すると、一瞬ショートスパークで目が見えなくなります。
ペンチを見ると、刃のところがそっくり無くなっています。
工作機械はときどき異常をきたします。
部品の金属を切削するために油を使っていますので、たまに漏電します。
漏電すると、電気は異常な流れをします。
そうすると、工作機械は信じられない動きをしたりします。
その漏電箇所を見つけたりするのも仕事でした。
病気と一緒で、毎回同じ症状が出るとわかりやすいのですが。
ときどき故障するというのは原因をつかみにくい。
工場の中は、切削油の蒸気で満ちています。
そこで働く作業員たちは、自分たちのことを油虫と呼んでいました。
焼入れ、鍛造、鍍金、プレス、様々な部門がありました。
それらの電気に関する作業を一手に引き受けていました。
ここでの仕事は今でもいい経験になりました。
その後の仕事には、役には立っていませんけど。