下り坂を楽しもう

人生を折り返して、下り坂も終わりに近い爺の戯れ言

謝罪

僕はいつも心の中で謝っていました。

髪の毛を三つ編にすることができなくてごめんね。
女の子らしい、かわいい服を着せられなくてごめんね。
いつも着替えやタオルやティッシュを持っていなくてごめんね。

するといつも長女が答えるのです。
いいの、いいの!
そう言いながらいつも楽しそうに、お友達の中に飛び込んでいった。

長女がまだ保育園の頃。
公園のプールに行くと、遊ぶのが楽しくて仕方ない様子。
急に便意をもよおしたのか、あっという間に公園の隅に行って水着を下してウンチをした。
僕はお尻を拭くための紙を持っていなかったのでおどおどしていた。
すると長女はそのまままた水着を履いて、いいの、いいの!と言いながらまたプールに飛び込んだ。

それから小学校に進み、お友達のなかで明るくふるまっていた。
そんな無垢で屈託のない長女の姿に、僕はどれほど助けられたことだろう。
そして長女はどんどんボーイッシュの格好をしてゆくようになった。
いつもお兄ちゃんのおさがりを身に着けて、男子みたいな恰好で自転車にまたがっていた。

もうかわいい女の子になることができないことを、悟ってしまったかのように感じた。
そうしながら彼女はそれを楽しんでいるかのように見えた。
大丈夫だよお父さん、そう言ってくれているかのように感じた。
そして僕は離れたところから心の中でまたもや、ごめんねとつぶやいた。

保育園の遠足には次男を抱っこして、長女の手を引いて参加した。
動物園の入り口でカートを借りて、それに弁当や着替えやおむつを載せて回った。
周りは若いお母さんたちと園児たちでにぎやかだった。

お昼になると、レジャーシートを広げて、簡単なおにぎり弁当を三人で食べた。
お隣を見ると、若い夫婦の二人が一人の園児と一緒に食事を楽しんでおられた。
そうか、三人は三人でも親子関係がまるっきり逆なんだ。
そんなことを思いながらおにぎりを食べた。

そして二人の子供に、お母さんがいなくてごめんね。
と、また心の中でつぶやいてしまった。