下り坂を楽しもう

人生を折り返して、下り坂も終わりに近い爺の戯れ言

ショートショート

吾輩は昭和の猫である。
主な仕事はネズミ捕りだ。
だから常に実績を上げなければならなかった。

この頃の猫のように、飼い主に媚を売るなんてことはしたことないぞ。
だから、かわいいなんて思われたこともなかった。
ただ食うためにネズミを捕まえたのだ。
どうだ、ワイルドだろう。

この頃のお前らを見ていると反吐が出るぜ。
腹が減ったら猫なで声を発しながら餌をねだる。
なんかよく知らないが、毎日同じ食べ物を飼い主から与えられて。
そのために、できるだけ飼い主のご機嫌に沿うようなことをして。
まったくなっておらん。

なんだと、ネズミがおらんだと。
そうか、うちから出たこともないのか。
昔は深夜に猫の集会が催されていた。
時々喧嘩もあって、傷だらけになってうちに帰ったことも何度もあった。
発情期には一晩中寝ないで、牝猫の取り合いをしていたぞ。

それがどうだ。
近頃はカワイイといわれて、インターネットなるものに出っ放しじゃないか。
悲しそうな顔をしたり、笑えないのに笑った顔をして、それに変な格好で寝てみたり。
まったく気合が入っていない。

まあ、仕事が無くなったから仕方がないと言えばそうだろうけど。
言い換えれば、今は飼い主を楽しませるのが仕事だともいえるのだろうけど。

吾輩の時代は、ちょうど今頃はサンマを咥えて塀の上を逃げまくっていたぞ。
そのあとからサザエさんが追っかけてきたもんだったなあ。
とても愛玩動物なんて思われていなかったのだ。
つくづく、時代も変わったもんになってしまったなあと思う。